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2019年7月18日 (木)

俳優はどのように台詞を覚えているのか

出来上がった映画作品やテレビドラマを観ているだけではそう思いませんが、プロの俳優でも長台詞の暗記には苦労するようです。かつて津川雅彦さんはこんなことを語っています。

『マルサの女』では、テストとテストの合間でも、何度も何度も台詞を口に出して、おさらいをすることで精一杯だった。ただただ台詞を叩き込むだけで必死だった。

でも、貴重な発見はあった。台詞を臓腑まに叩き込むコツは、忘れる「回数」と、口に出してしゃべる「回数」にかかっている事に気が付いた。どれだけ頑張って覚えても、一晩寝れば必ず忘れる。だから次の日また覚え直す、それで一歩覚えが深くなる。また、一晩寝て忘れて、覚え直す。そこでまた一歩深く覚える。忘れる回数を多くする程、深く覚えられるんだ。僕の場合、二週間、つまり十四回忘れて覚え直すことが必要だった。また、杉村春子さんは「千回も言えば覚えるわよ」と事も無げにおっしゃる。小林桂樹さんは五百回。僕はせいぜい百回が限度だが、日数をかけて忘れる回数を多くすることでカバーしている。

更に台詞を覚える回路を変える事も大切だ。まず脚本の全体の意味と流れを「頭」で掴む。次に台詞の字を「目」に焼き付ける。次に人に読んでもらい「耳」で覚える。そして自分でしゃべって「舌」と「口」に覚えさせる。「更にリハーサルで動いて「身体」に覚えさせる。覚える回路を増やすと、線が一つ切れても別の回路が繋がって台詞がスムーズに出てくる。最後は車を運転しながらでも、台詞が自在に言えるようになった事を確認して仕上げとする。

プロでさえこれだけのことをやっているのです。1回で完璧に覚えられないのは当たり前です。五感をフルに使う。何度も繰り返す。忘れた回数が多いほど深く覚えられる。私たちにも参考になるところが多いと思います。

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