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2016年7月29日 (金)

『福翁自伝』のすゝめ

福沢諭吉の自伝『福翁自伝』はなかなかおもしろい本です。

『福翁自伝』の中に、適塾時代のエピソードとして、「遊女の贋手紙」という話が載っています。

そのとき江戸から釆ている手塚という書生がいて、この男はある徳川家の藩医の子で、如何にも見栄えがよくて立派な男だったが、身持ちが善くなかった(女好きだった)。
そこで私がある日、手塚に向かって「君が本当に勉強すれば僕は毎日でも講釈をして聞かせるから、遊女のところに行くのはやめとけ」と言ったら、手塚もそのときは「決して行かない」と言う。「いや疑わしい。行かないという証文を書け」「宜しい、如何なことでも書く」と言う。
そこで「今後きっと勉強する、もし違約をすれは坊主にされても苦しからず」という証文を書かせて私の手に取っておいて、約束の通りに毎日特別に教えていたところ、その後手塚が本当に勉強するから面白くない。
私は仲間と相談し、手塚の馴染の遊女の名前を使って、手塚を誘い出すような遊女風の手紙を書く。手塚を大阪なまりにテツカというのだが、そのテツカを鉄川と書いてもっともらしさを出した。
その手紙を受け取った手塚は二、三日後にはたしてその遊女のところに行った。翌朝帰ってきた手塚を、はさみをもって「坊主にするぞ」と迎える。髻(もとどり)を捕えて鋏をガチャガチャいわせると、手塚は真面目になって手を合わせて拝む。
そうすると共謀者中から仲裁人が出て来て「福沢、余り酷いじゃないか」「何も文句なしじゃないか、坊主になるのは約束だ」と問答の末に、結局、坊主の代わりに、手塚に酒や鶏を買わせることにした。このとき「お願いだ、もう一度行ってくれんか、またこんな風に酒が飲めるから」と言ったのは、ずいぶん乱暴だけれども、それが自然といいこらしめになっていたこともあるだろう。

『福翁自伝』には、他にもたくさん福沢諭吉の人間らしい一面を伝える話が載っています。慶大生以外にもおすすめですよ。

ちなみに、この手塚とは手塚良庵(良仙)のことで、漫画家の手塚治虫の曽祖父に当たる人物です。手塚作品の『陽だまりの樹』にも同様のエピソードが登場します。

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